上層気象観測(高層気象観測)業務は、全国で多くの実績を積んでおり、その信頼性から観測だけではなく、その後のデータ解析、さらには検討委員会の対応まで任せていただいています。
最新のラジオゾンデを使用した観測を行い、リアルタイムで大気の状態を確認することで、より安定した高精度の風向・風速データを提供いたします。
環境アセスメントと上層気象観測
環境アセスメント(Environmental Assessment)という言葉を聞いたことのある方はたくさんいらっしゃると思います。 「アセスメント」とは「評価」という意味で、環境アセスメントとは「開発がもたらす環境への影響を、事前 に予測・評価すること。」と記述されています。
人間生活は開発によってより良いものへと発展していきますが、汚染物質などが排出されてしまうケースも少なくありません。 焼却施設など汚染物質が排出される場合、どのように拡散していくかといった評価が事前に必要で、そのためには上空の大気の流れを知る必要があります。
環境アセスメントに関した大気質調査の一環として上層気象観測や地上気象観測を実施しています。
上層気象観測では、ラジオゾンデという気象観測機器とそれを飛翔させるためのバルーン(ヘリウム入り)とラジオゾンデから送られてくるデータを収集する受信機装置を用います。
気象庁では天気予報のための観測として全国16ヶ所で高層気象観測を1日2回実施していますが、時間分解能が12時間と粗いため、環境アセスメントでの使用には向きません。 環境アセスメントには大気境界層と呼ばれている層(高度2000m以下)の詳細な情報を得る必要がありますが、この大気境界層の気象は地上と同じく日変化をします。
すなわち、時間分解能の高い観測が必要で、当社では3時間毎(7日間)のGPSゾンデ放球を実施しています。
項目は風向風速の他、気温も観測しており、逆転層の検出などの解析を行ないます。
使用機器
測定精度が高いゾンデを使用
上層気象観測(高層気象観測)で用いられるゾンデの代表的なメーカーは世界に複数ありますが、日本気象はWMO(世界気象機関)による比較実験レポートより、計測精度が高く安定した観測が可能であると評価されたラジオゾンデを採用しております。
この機器は、国内外で多くの実績があり、環境アセスメント、線状降水帯観測など、様々な目的に対応してきました。
データ解析・委員会対応
最終報告書の作成から検討委員会の対応まで、最終報告書として提出できる形式で報告書を作成します。解析は大気安定度、逆転層の実態把握、上層風の推定べき指数の算出、海風前線の検出など、ご要望に応じて実施いたします。
また、それぞれの案件に対する検討委員会用の資料作成も実施しております。
解析例
逆転層の状況
気温が上空へ行くほど低くならず、逆に上昇する層を逆転層といいます。逆転層内では上下の空気混合が起こりにくくなり、大気汚染物質が滞留し、高濃度汚染が生じやすくなることから、その実態を把握する必要があります。
観測データより、逆転層の出現の様子やその発生の原因を推定します。
上層風の推定べき指数
上層の風の状況で、大気拡散の状況は違ってきます。大気安定度毎に、観測結果から、上層風のべき指数を算出します。
内部境界層高度の算出
沿岸地域では海風による内部境界層フュミゲーションにより、大気汚染物質が高濃度になる傾向があります。
この内部境界層の高度を、観測データから算出します。
算出には、GPSによる緯度・経度情報を用い、どの地点のどの高度で発生しているかを調べます。
上層気象観測に関する諸法規
航空申請手続き
上層気象観測で使用する観測設備・器材は、電波法・航空法の規制を受けます。
観測を行うには、各法規に従って設備、器材を適正な状態に維持するとともに、必要な免許の申請を行う必要があります。当社では、申請作業の一式を行います。
航空法に関する申請上層気象観測(高層気象観測)
上層気象観測では気球を飛揚するため、航空法で定められている「航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為」に該当します。
航空法第99条の2では、あらかじめ、その旨を通報しなければならないとされています。
電波法に関する免許上層気象観測(高層気象観測)
上層気象観測で用いるゾンデは、電波法第103条の2第1項で規定されている無線局(気象援助局)にあたります。 このため、観測を行う際には、電波法の申請・免許の取得を行う必要があります。
当社では、この電波法の免許を全国各地域において取得しており、全国各地において迅速に観測を行う事が可能な体制を取っております。